扉を開けると其処は不思議な場所でした?
2-0 Through the Doors
さっきから何処かで物音がする気がするんだわ。
ゴキーズかストーカーかFBI捜査官だと思うんだけども。
どれだろうどれだろうどれだろう。
どれもこれも有り得る話すぎて分かんない、やっぱFBIか。
ま、あんまり気にするとハゲるおそれがあるのでね。
「おお!!立浪、猛打賞じゃん!」
ていうか中日ドラゴンズが久々に勝っててそれどころじゃないので。
もはやアレですよ。
ボールガールの顔に自分の顔、アイコラしちゃう勢いですよ。
気分は名古屋人、気分は中日ナイン、気分はジーコジャパン!
いいね、いいね、ラモスいいよね。
あの怒りっぷり!あの濃い姿形!あの最近の復帰ぶり!
・・・・それにしてもなついですね、あつ。
いや間違った、暑いですね、夏。
野球の合間に入るエアコンの宣伝はアレです。
もはやバニーガール的なノリであたしを誘惑にかかってます。
はっはーん、ザマぁ見やがれアホ!
いくら宣伝してもあたしには金がないんですよね!
なんだっけホラ・・・かんづきくん?
かんづきはじめ!
そのかんづきくんの漫画を古本屋で七冊買ったので金欠なのです。
というか給料日まで二十日を残した時点ですでに所持金は諭吉さま一枚。
ガス代はどうする、電気代はどうする、水道代は・・・。
そんなこんなで今朝は八時から奥様方に混じってスーパーに並びました。
戦利品は99円の卵と198円のトイレットペーパーです。
うわあ、生活感が溢れてるう!
「いよっしゃぁぁ!くたばれ縦じま!くたばれハリウッド!」
嗚呼、あたしはどうして名古屋人じゃないんでしょう。
どうしてブロンド碧眼の西洋美女じゃないんでしょう。
教えて、おじいさん。教えて、アルムの森の木よ。
らーりらーりらっほっほいらっほっほいらっほっほ。
「ねえちょっと」
口笛が遠くまで聞こえちゃうような大声少女であるところのハイジ。
あの雲が私を待ってるように感じてしまうような電波少女であるところのハイジ。
そんなやつに飲ませる乳なぞ出さんでいいのだ、ユキちゃんよ!
いいからあたしの部屋へいらっしゃい!
『もう勘弁して欲しいメェェェ』っていうくらい搾り取ってあげるから・・・!
ん?ヤギはメエメエ鳴くのかな?
メエメエは羊さん?ヤギはメエメエ鳴かない?
「もう勘弁して欲しいヤギィィィ・・・?」
あ、こっちの方がヤギっぽい。
新しい発見だ、これは是非とも心の師・むつごろうさんにお教えせねば。
北海道に行くお金はないが、現代っ子の強い味方は電話さんだ。
「ねえちょっと」
タウンページには載ってないかもしれないから、まずは番号案内に・・・。
『むつごろう王国の電話番号教えてください』?
そしてもしも今日明日中にむつごろうさんが黄泉の国へ旅立ってしまったら・・・?
どうしよう、通報されるかも。
『不審な少女がむつごろう王国の電話番号を尋ねて来ました!』
あああ!FBI捜査官の魔の手がいたいけな少女に・・・!
それ以前に電話が止まってる・・・!
もっと大変なことに中日が逆転されてる・・・!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!落合ぃぃぃぃぃぃ!!」
「うるさいなあ。ねえちょっと、アンタ、聞いてる?」
はて?今何か聞こえたような。
いや、それどころじゃない。
このままずるずると負け続ければ最下位転落も時間の問題だ。
それは困る。精神衛生上よろしくない。
「ほら、今のストライクだろーが!審判、目ぇおかしいんじゃないの!?」
あたしの素晴らしい目と取り替えてやりたい。
なんてったって英世が諭吉に見える目だ。
こないだレジのスーパーで諭吉を差し出したら「足りません」とか言われ。
よくよく見てみれば諭吉じゃなくて英世で・・・あら大変。
財布に入ってる諭吉が英世だったらどうしよう・・・!
財布どこ置いたっけ、ベッドの上?
ん?ベッドの・・・上?
「どちらさまですか?」
誰だこの、ちょっと見覚えがあるような顔の人は。
「やっと気が付いたんだ・・・非道いよね、俺ずっと居たし声まで掛けてやったのに
全部無視するんだもんな。そんなに存在感薄いかな、あーあ落ち込むなあ。
俺が繊細な心の持ち主で存在感が薄いのを気に病んで自殺するようなヤツだったら
どうするんだろうな。まあ違うから良いけど、無視されるのも慣れてるから別に良いけど
・・・それでもやっぱり傷付くよね。どうしようかな、報復するべきかな・・・」
「あの、どうでも良いので其処どいてください」
財布、あたしの財布、たぶん諭吉さまが入ってるはずの財布。
「どうでもいい・・・?」
そりゃあね、諭吉さまより価値あるものなど日本国に存在しませんから。
などという言い訳は聞いて貰えないんでしょうか・・・?
また喧嘩か。
|