こちら。
花も羨む恥じらいの時。
目下のところ転落人生を急下降中の13歳です。
そこな行く素敵なあなた。
あたし(とあなた)の人生変えてみませんか?
Sg Series Extra 1
Me and Mr. Mushroom
こんなこと言いたくないけど言わずにいられない。
・・・・・・・今日という今日はヤバイ。
『いくら跡部くんの幼なじみだからって、もう次はないですからね』
などと。
語尾に血塗られたハートマークがもれなく付いてます!
ってかんじに宣告されてしまったのが昨日なのだ。
昨日といえば新一年生の入学式で。
昨日といえば在校生は必ず出席の筈で。
あれ?どうしてあたしは入学式の記憶がないの?
あるわけないよね、行ってないんだから・・・。
でもそんなのあたしだけじゃない筈なの。
何人か、もしかしたら十何人かはサボっちゃった筈なの。
欠席理由 : 春眠が暁を覚えないから
ってかんじで欠席した人が絶対居ると思うの。
だからあたしにだけ上記のような電話をしてくる先生は。
正直、逆贔屓とかしてるんじゃないかと思う次第で候。
ハッ、人の若さを妬んでんじゃないわよ!年増!アホ!
そんなこんなで今朝。
爽やかに、むしろ爽やかすぎるくらいの日差しを浴びつつ起床して。
優雅に(水道水だけの)ブレックファストを(文字通り流し込んで)。
これは牛歩でも余裕で間に合うでしょ。
・・・とか余裕ぶっこいてた自分が恨めしい。
ところで、我が家には時計がなくて。
最寄りの時計はご近所のガソリンスタンドに。
・・・あるんだけどね。
あの時計壊れてるんじゃないかな・・・?
だっておかしいもん。
おかしすぎる。
短針が『1』のところにあるのはどうして・・・?
あ、もしかして深夜の1時なのかな。
まだ今日になってないのかな、このあたりでは。
そうかそうか、それなら帰ってもう一回寝よう。
心なしか太陽が見える気がするけれども。
きっとアレだ。
太陽さん働き盛りだから。
もしくは太陽さん宅の時計、間違ってるとか。
それとももしくは日本列島がアイスランドなみに白夜になっちゃったのか。
さてどれが正解でしょう。
『純粋にあたしが寝坊したから』
ピンポンピンポンピンポンピンポーン!大正解!
なんて一人『アメリカ縦断うるとらクイズ』を終えて。
走りましたよ、もちろん。
歩いてるカメさんなら追い越せるかもしれないくらいのスピードで。
煩い先生方への傾向と対策。
もしかしたら丸め込めるかもしれないジェントルな先生への口説き文句。
最終手段の金策などなど。
なんにも思いつかないうちに学校に着いて。
愛しのべ様に援護射撃をお願いすべく、向かったテニスコート。
そのテニスコートに辿り着き。
辿り着いた瞬間、落ちてしまった。
恋という名の落とし穴に。
こんな可愛い子がいると事前に知ってたなら。
ちゃんと入学式にも出た筈なのに。
どうして誰も教えてくれなかったんですか・・・?
「ねえ少年、名前なんていうの?キノコ?キノコ・ド・マルシェ?」
「いきなり何ですか、失礼な人ですね」
「そうなの、失礼な人なの。
失礼な人すなわちあたし!の名前はっていうの。
『先輩』でも『さん』でも『ちゃん』でも『』でも『愚妻』でも
どうぞマルシェくんの好きなように呼んで?」
「何言ってるんですか」
別に好きなタイプが『胞子を飛ばせそうな人』とかなわけじゃない。
むしろどっちかというと非の打ち所がない美少年の方が好きなので。
ていうかこんな子初めて拝見したので。
ほら、あたしって絶滅危惧種に弱いから・・・・。
「、オマエ何やってんだ?」
テニスコートの片隅で生まれたての愛を惜しみなく紡いでたら。
なんだか巨大な男の子を従えたべ様が。
ものすごく不審そうな顔をして現れた。
「おはよう、べ様」
「おはようの時間じゃねーだろ。行くぞ」
「え?何処に?」
「学長室に決まってんだろ」
学長室に?決まってる?学長室?・・・・職員室じゃなくて?
「あの、いつの間にそんな大変なことになってたんでしょうか・・・?」
「が寝てる間に」
「なるほど」
「いい加減、手、放して貰えますか」
無愛想な声にふと見ると。
そういえばマルシェくん(仮名)の手を勢い余って掴んだままで。
あら嫌だ、あたしってば破廉恥なことを・・・
なんて思うわけないよね、普通。
「それじゃあマルシェくんも一緒に行こう。
マルシェくんが『申し訳ありません!妻のしつけに失敗しまして!』って
土下座とかしてくれたら、学長のおっちゃんも許してくれるかもしれないし」
「、頭でも打ったか?」
「うん打った。恋という名の突然のハリケーンに巻かれた弾みで」
「放して下さい」
「無理」
あたしが狙った獲物をみすみす逃しちゃうような女に見えるのか。
まあ、そう見えてた方が何かと都合はいいけども。
「何でもいいから、行くぞ。早い方がいい」
というわけで。
べ様とそのお連れの巨人くん。
それからあたしとマルシェくん。
元気よく(一部元気なく)向かった学長室で。
あたしを見るなりカツラが吹っ飛びそうな勢いで怒り出した学長は。
マルシェくんのお力添えを受けるまでもなく。
べ様の振りかざした『きふきん』という4レター・ワードの前に。
すっかり快くお怒りを鎮めて下さった。
なかなか話の分かるおじさまじゃないか。
学長室を離れて。
再びテニスコート脇に戻ってきて。
べ様に頭を下げるあたし。
「何度となくお世話掛けてすみません。これからもよろしくお願いします」
「のためだろ?なあ、樺地」
「ウス」
「え?今なんて?かばじ?かばじって言った?」
かばじくんと言えば初等部卒業に際してべ様が泣く泣くお別れしてきた子で。
可愛い弟分というかお友だちというか舎弟というか。
そんなかんじの子で。
「アーン?オマエ樺地忘れたのかよ」
「だってそんなに大きくなかったじゃん・・・?」
「ウス。成長期で・・・伸び・・・ました」
あたしの成長期はせいぜい10センチしか伸びなかったのに。
ていうか中等部でもやっぱりべ様のお世話させられるんだ?
それでいいんだろうか、樺地くんは。
それがいいんだろうか、べ様は。
「久し振りだねー!大きくなったね!ほんと大きくなったね!」
「ウス」
「あの、そろそろ手、放してもらえますか」
マルシェくんの手を巻き込んで樺地くんと握手したのがいけなかったんだろうか。
とにかく目付きの悪い(でもそこが可愛い)マルシェくん。
あたしに思いっきりガンをくれてる(でもそこが可愛い)マルシェくん。
むしろこれは睨んでるんじゃなくて見つめ合いを望んでるのかマルシェくん。
「なんでそんなに見てくるんですか、あなた」
「え?マルシェくんが見てくるからだけど?」
「マルシェくんって何ですか。日吉です」
「あ、日吉くんっていうんだ。あたしね」
「もう聞きました」
とにかくつれない(でもそ…略)マルシェくん改め日吉くん。
べ様はすでに呆れ果ててるかんじで。
樺地くんは常に無表情だ。
「で?日吉なにくんっていうの?」
「あなたに教える義理はありません」
「担任の先生には教えてるくせに」
「当たり前です。どうでもいいので手を放して下さい」
「無理。名前教えてくれたら・・・」
「日吉若です。さあ放して下さい」
わかしとはまた、古風というか変わってるというか。
「ところでピヨくんはテニス部入るの?」
「そうです。手を放して下さい」
「べ様、ピヨくんと仲良くしてね、あたしのために」
そしたらお昼御飯とかご一緒出来るかも。
べ様は「分かった」と小さく頷いてくれて、ほっと一安心。
「それじゃあピヨくん、ほんとうに名残惜しいんだけど帰るね、あたし」
「どうぞ、早く帰って下さい」
「、俺様の勇姿を拝んでから帰れよ」
「遠慮しとく。見飽きた」
というわけでね。
春眠に朝も昼も夜も関係ないので。
「じゃあね、ピヨくん。また明日ね、ピヨくん」
「もう会いたくありません」
「・・・・・・え?あ、嘘?」
「嘘なんか吐いてどうするんですか」
ショックのあまり帰り道でいろいろ轢いたかも・・・。
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